ネット上の名誉毀損-不当な請求への対抗策②

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法律事務所からの損害賠償請求

ネット上の名誉毀損-不当な請求への対抗策①(被害者が行う発信者情報開示請求)
ネット上の名誉毀損-不当な請求への対抗策③(被害者弁護士が提示する不当条項)

ケーブルテレビ会社から発信者情報の開示を受けて、法律事務所から請求書が届きました。5chへの書き込みから約1年後のことです。

被害者の代理人弁護士からの請求は、総額310万円でした。厳密に言うと、被害者は個人A氏、A氏が代表を務める法人B、法人Cです。内訳は、被害者3名に対する慰謝料等が200万円、発信者情報開示にかかった弁護士費用が110万円です。

加害者が弁護士に依頼

被害者弁護士からの請求を受けて、加害者は当事務所に相談にやってきました。加害者から事情を聴取し、被害者弁護士からの請求書を精査して、以下のような問題が判明しました。

問題点1(高額の慰謝料)

被害者側弁護士は、3件の投稿について慰謝料200万円が請求してきました。裁判で認められる慰謝料よりも明らかに高額です。

慰謝料というのは、精神的苦痛を金銭に換算したものです。しかし、日本の裁判実務では、高額な慰謝料が認められることは少ないのです。例えば、交通事故で人が死亡した場合に、遺族が請求できる慰謝料は2000万円程度です。その是非は別の問題です。実態として慰謝料には相場が有り、それほど高額ではないのです。

本件の投稿は、ネット上ではありふれていると言って良いレベルのものでした。人が死亡した場合と比較して、その1/10もの精神的苦痛を与えるような内容では有りません。

問題点2(証拠資料の非開示)

被害者側弁護士は、弁護士費用を請求しているにも関わらず、その根拠となる資料、たとえば請求明細などを何も添付していませんでした。発信者情報開示の弁護士費用として110万円かかったと書いているだけです。これでは支払えるはずが有りません。

なお、請求明細を添付してこなかった理由は、あとから判明しました。

加害者弁護士としての交渉

当事務所では、妥当な損害賠償額での和解を目指して、加害者から依頼を受けました。そして、受任通知の発送とともに、被害者側の弁護士費用の根拠資料の提示を求めました。被害者側弁護士から請求書等の開示を受け、何度か質疑を行った結果、以下の事実が明らかになりました。

まず、弁護士費用のうち30万円については、5chに対する投稿10件のIPアドレス開示請求および投稿の削除請求に対する報酬金であることが判明しました。また、40万円については、IPアドレスをもとに、ケーブルテレビ会社を含む3社に対して発信者情報開示訴訟を提起した着手金、残りはその報酬金と実費であることも判明しました。

すなわち、被害者側弁護士は、加害者以外の多数のIPアドレス開示請求の報酬、加害者以外の多数の発信者情報開示請求の報酬も含めて、一人の加害者に請求していたことになります。これでは弁護士費用の二重取り、三重取りになってしまいます。当初、根拠資料を添付してこなかった理由がわかりました。

以上の事情を踏まえて、加害者側弁護士としては和解金100万円程度が妥当と考えました。ところが、和解案を詰める段階で、被害者側弁護士から、ある条項を付け加えてほしいという要望が出てきたのです。

ネット上の名誉毀損-不当な請求への対抗策①(被害者が行う発信者情報開示請求)
ネット上の名誉毀損-不当な請求への対抗策③(被害者弁護士が提示する不当条項)

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