従業員が起こした事故と会社の責任①

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従業員の行為に対する会社の責任

 会社の従業員が、就業中にミスをすることがあります。これはもう、仕方がないことです。そして、そういったミスによって、第三者に損害を与えてしまうことがあります。これも、ある程度は仕方がないといえるでしょう。
 典型的には、従業員が就業中に交通事故を起こした場合です。こういった場合、とりあえず会社が被害者への損害賠償に応じ、あとは会社と従業員との間で清算することが多いと思います。

使用者責任

 このような清算方法は、民法715条に根拠があります。同条は、被用者(従業員等)が第三者に損害を与えた場合に、使用者(会社、個人事業者等)が責任を負うことがあると規定しています。
 もちろん、使用者自身に過失がある場合に、使用者が責任を負うのは当然です。例えば、運送会社が、ドライバーに過積載を指示していた場合などです。過積載が原因で事故が起きた場合、会社は過積載の指示という過失に基づき、損害賠償に応じる必要があります。
 問題は、使用者自身に直接の過失がない場合です。例えば、ドライバーの前方不注意による事故は、会社に直接の過失があるとはいえません。民法715条は、そのような場合にも、使用者が責任を負う場合があることを規定しているのです(使用者責任)。

使用者責任の拡大

 使用者責任は、判例上、かなり広い範囲で認められています。厳密には従業員の職務とは言えない行為、例えば休憩時間中の行為や、従業員の地位を利用した詐欺行為についても、使用者は責任を負う場合があります。
 これは、報償責任という価値判断に基づくものです。すなわち、使用者は、他人を使用することによって、自分の活動範囲を拡張し、それだけ多くの利益を受けるだから、損害についても負担させるのが公平であるという考え方です。
 ある従業員が、社員寮の厨房で勤務しているときに、別の従業員に暴行を加えて、傷害を負わせたという事案において、会社の使用者責任を認めたという裁判例もあります。
(後半に続く)

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