インターネット上での名誉棄損②

更新日:

民事上の名誉棄損

 これに対して、民事上の名誉棄損は故意でも過失でも成立します。ただし、刑法230条の2の趣旨を敷衍し、前述の①②③が認められる場合には、判例上、民事上の責任も負わないことになっています。

名誉棄損に対する救済手段

 他人の表現行為により、事故の名誉を棄損されたものは、表現行為者に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求することができます。この請求は民法709条に依拠します。
 さらに、人格権を根拠として、表現行為の削除を要求することが可能です。この請求は、特別な根拠法がないため、憲法13条を根拠として裁判所に申し立てます。
 さらに、削除するだけでなく、名誉回復措置を求めることも可能です。表現行為の削除により、将来の名誉棄損はなくなります。一方、名誉回復措置は、過去の表現行為により棄損した名誉を回復することを目的としているのです。
 名誉回復措置としては、謝罪広告の掲載や反論文の掲載なども考えられますが、通常、過去の記事等の取り消し、訂正のみを命じる裁判例が多いといえます。
 謝罪広告などは、思想・良心の自由(憲法19条)との関係でも、問題が多いからです。その意味では、訂正広告であっても、思想・良心の自由の制約であることは否めません。
 したがって、訂正広告であっても、名誉棄損に対しては、金銭賠償が原則、名誉回復措置は例外といわれています。

事前差し止め

 では、名誉棄損が行われることを事前に察知した場合、名誉棄損行為を事前に差し止めることができるでしょうか。
 実は、事前差し止めは、事後の削除処分、訂正命令と比較して、表現の自由に対する制約の度合いが強いといわれています。どのような表現行為が差し止められたかを、市民が事後的にチェックすることができないからです。
 先ほど述べた通り、民主主義社会において、表現の自由は優越的地位を有しています。事前差し止めは、かなり例外的な場合にのみ、認められるといってよいでしょう。

タイトルとURLをコピーしました