不動産価格が問題となる場面
不動産の価格は、いろいろな場面で問題となります。
例えば、遺産分割。相続人の誰かが不動産を取得する場合、その他の相続人に対して、代償金を支払うことになります。その代償金の金額を算定するにあたり、不動産の金額をいくらと仮定するのかが問題となるのです。
例えば、個人再生。再生計画を策定するにあたっては、再生債務者の財産の清算価値(破産を前提に現金化したらいくらになるか)を上回る弁済額とする必要があります。その際、自宅不動産の価値をいくらで算定するかが問題となります。
こういった問題が生じる原因は、売却しないのに売却したものと仮定するという点にあります。仮定の金額となるため、明確ではない。また、実勢価格のほか、いくつかの公的価格が存在します。それゆえ、当事者間で見解の相違が生じやすいのです。以下では、数種類の不動産価格について説明しますが、それぞれの価格の関係性についてはこちらをご覧ください。
不動産価格あれこれ
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、固定資産税を決める際の基準となる評価額です。所有者には、毎年4月から6月頃、固定資産税評価額の記載された納税通知が送られてきます。この価格から課税標準額が算出され、税率を乗じて、固定資産税額が決定されます。
固定資産税評価額は、後述する価格の中では最も低額ですが、行政が全不動産について決定する公的価格であることから、当事者全員の合意のもと、当該不動産の価格として採用される場合もあります。不動産の所有者(となる者)にとっては、最も有利な価格と言えるでしょう。
公示価格・基準地価
公示価格(公示地価)は、土地の取引価格の指標や、土地収用の補償金を算定等のために決定される評価額です。いくつかの「標準地」について国土交通省が決定しており、「土地総合情報システム」のウェブサイトで誰でも閲覧することが可能です。
公示価格は、建物にはありませんし、標準地ではない土地にもありません。不動産の価格として公示価格が採用されることは、ほとんどないといってよいでしょう。
基準地価は、公示価格に似ていますが、都道府県が国土利用計画法に基づき決定しています。
路線価
路線価(相続税評価額)は、相続税や贈与税を決める際の基準となる価格です。「路線価図・評価倍率表」のサイトで誰でも閲覧することができ、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価格が千円単位で公開されています。路線価が定められていない地域の場合、評価倍率表を参考にすることになります。なお、同サイトでは、借地権割合も確認できます。
路線価は、建物にはありませんし、土地の形や接道状況などの個別の事情が加味されていません。しかし、評価倍率表等を利用することで、すべての土地について一応の算定が可能です。そのため、当事者の合意のもと、当該不動産の価格として採用される場合があります。
実勢価格
実勢価格とは、実際に売買が行われた際の価格、または周辺の取引事例から推定した価格であり、「土地総合情報システム」のウェブサイトで誰でも閲覧することが可能です。
実勢価格は、実際の売買価格であるため、「売却した場合」の価格として最も精度が高いといえます。
もっとも、同一の土地について、数年以内に売買が繰り返されることは少ないため、近隣の取引事例からも推定価格となる場合がほとんどです。また、過去の取引事例には、売主、買主の個別事情(資金繰り等)が、当該土地の個別事情(形状、接道状況等)が反映されていることから、推定にも限界があります。
不動産鑑定士・不動産業者の鑑定額
不動産鑑定士や不動産業者に価格の鑑定を依頼した場合も、基本的には上記の価格を参考にして、総合的に評価することになります。
加えて、不動産業者の査定においては、査定を依頼した者の意向、不動産業者自身の意向が反映されることもあるでしょう。融通が聞くとも言えなくはありません。
一方、不動産鑑定士の鑑定においては、査定を依頼したものの意向、不動産鑑定士自身の意向は、基本的に反映されません。融通が利かないとも言えますが、第三者にとっても信頼性が高いといえるでしょう。
それぞれの価格の関係性についてはこちら。