インターネット上での名誉棄損①

インターネット上の名誉棄損の特徴

 インターネットの進化により、個人が情報発信をすることが容易になりました。従前、新聞社、放送会社などがメディアを独占していた状況が崩れだしたのです。
 インターネット社会では、誰もが容易に名誉棄損の加害者となり、被害者となりえます。さらに、ネット上での名誉棄損の被害は、放送メディア、出版メディア上での被害よりも、より深刻です。理由は、大きく分けて、三つあります。
 まず、名誉棄損情報へのアクセスが、従前のメディアと比較して、極めて容易になりました。コンピューターを操作し、検索することで、時を選ばず、場所の移動を要せず、容易に情報にアクセスすることが可能になったからです。
 次に、情報が閲覧可能な状態が、長期間継続するようになりました。放送による情報は、録画・録音などしない限り、再現性がありません。紙媒体は、店頭に並ぶ期間が比較的短く、長期的にみても紙は劣化しやすい情報媒体です。一方、ネット上のデジタル情報は、劣化せず、スペースも取らないため、長期間サーバー上に残り続けます。
 さらに、それらの情報の複製が、極めて容易であるというのも特徴です。これは、一度ネット上に出てしまった情報を根絶することは、ほとんど不可能であることを意味しています。

名誉棄損の意義

 次に、名誉棄損の意義について、説明します。これは、インターネット上の書き込みに限りません。
 他人の表現行為により毀損されうる「名誉」は、外部的名誉と名誉感情に分けられるといわれています。前者は人格的価値に対する社会的評価、後者は人格的価値に対する自己評価、自尊心と考えるとわかりやすいでしょう。

刑法上の名誉棄損

 刑法230条は、公然と事実を適示して、人の名誉を棄損したものに対して、3年以下の懲役・禁固、50万円以下の罰金を規定しています。窃盗罪や、傷害罪に比べれば、軽い罪といってよいでしょう。
 ところで、名誉棄損の処罰は、一方で、表現の自由に対する制約となります。表現の自由は、民主主義が正常に機能するための前提となる重要な人権です。それゆえ、他の人権よりも、優越するといわれており、その制約には慎重にならないといけないません。
 そこで、刑法230条の2は、他人の名誉を棄損した場合でも、①事実の公共性、②目的の公益性、③事実の真実性がある場合には、名誉棄損罪は成立しないと規定しています。
 ここでは、③事実の真実性だけでは、名誉棄損罪の成立は否定されないことに注目してください。「だって、本当のことでしょう?」ということだけで、他人の名誉を侵害することは許されないのです。
 また、名誉棄損罪は、故意犯と呼ばれる累計の犯罪です。過失で名誉を棄損した場合でも、罪にはなりません。そして、上記①②が認められ、事実が真実であると誤信することについて相当の理由がある場合には、故意がないものとして、名誉棄損罪は不成立となります。

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