保険外交員の闇②

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保険外交員の自爆営業

 自爆営業という言葉を聞いたことがある方もいると思います。自爆営業とは、郵便局員が、年賀はがき等の営業ノルマを達成するため、年賀はがきを自ら買い取るような行為です。そして、保険外交員にも、自爆営業というものが存在します。
 といっても、保険の外交員は、自ら保険会社と契約を締結するわけではありません。多くの場合、他人名義の契約について、その保険料を肩代わりするという形をとります。契約者に対して、保険料を負担しなくてよいので、契約だけ締結してほしいと頼み込むのです。

自爆営業で外交員は得をするのか?

 保険外交員が自爆営業に走る理由は、営業成績に応じて支給される歩合給にあります。とはいえ、歩合給は保険料よりも安い。自爆営業の契約は数か月で解約される運命にありますが、数か月分の保険料よりも歩合給が高いということはあり得ません。当然でしょう。歩合給の方が高かったら、保険会社は軒並み倒産してしまいます。
 したがって、自爆営業で契約をとっても、保険外交員に経済的なメリットはありません。逆に、自爆営業をせず、営業ノルマが達成できなかったとしても、歩合給が支給されないだけです。基本給が減らされるということはありません。どちらが得かは明らかなはずです。

チーム制の闇

 それでも保険外交員を自爆営業に駆り立てる理由が、保険外交員を取り巻くもう一つの闇、外交員のチーム制です。大手保険会社は、保険外交員を5人程度のチームに分け、チームの営業成績に応じて、チームのメンバー全員に歩合給が支払うという制度を導入しています。
 先に述べたように、営業ノルマを達成できなくても基本給が減らされることはありませんが、チームへの歩合給が支給されないという形で、チームのメンバーに迷惑をかけることになるのです。他のメンバーへの罪の意識を利用して、自爆営業に駆り立てる。よくできた制度だと思います。

現代の隣組制度

 しかし、そもそも自爆営業をしなければならないような外交員の収入は、とても安い。その中から、営業グッズを会社から購入し、営業先への手土産を購入しています。さらに、自爆営業契約の保険料を支払うと残りは数万円、食費をギリギリまで削りながら、何とか家賃を支払っているという外交員も少なくありません。
 さっさと会社をやめて生活保護を受給すれば、おなか一杯ご飯が食べられますよと助言したこともあります。それでも、その方は会社を辞めませんでした。それほど、定期的な収入に対する執着は強いのです。別の言い方をすると、生活保護への拒否反応は強いのです。
 江戸時代の隣組制度は、今も保険外交員の周りで生き残っています。
(保険外交員の闇③)

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