下請法の基礎知識①

下請あれこれ

 下請といわれて、どんなことを思い浮かべるでしょうか。建設工事の下請を思い浮かべる方は多いでしょう。
 例えば、オリンピックスタジアムのような大きな工事は、大きな建設会社、いわゆるゼネコンと呼ばれる企業が受注します。
 しかし、大きな建設現場で作業をしている人たちが、全員ゼネコンの従業員なのかと言うと、それは違います。いかにゼネコンといえども、それだけの大規模工事を行うだけの人員を、常時雇用しておくことはできません。
 働いている人の多くは、ゼネコンから受注を受けた別の建設会社(下請)の従業員だと思います。あるいは、その下請会社から、さらに受注を受けた建設会社(孫請)の従業員でしょう。
 こういった下請取引は、建設業以外にも存在します。例えば、コンピュータソフトウエアの製作、貨物の運送などです。

下請取引の問題点

 日本における下請取引には、いくつかの特徴があります。
 まず挙げられるのは、下請事業者と親事業者との関係が、非常に長い期間にわたって維持されるということです。また、下請事業者の経営が、特定の親事業者からの受注に依存していることが多いのも特徴といえます。
 こういった特徴があることから、下請取引においては、親事業者の地位が圧倒的に強くなっています。
 例えば、原材料価格の高騰が明らかなのに、親事業者が下請代金の増額に応じない。あるいは、顧客の都合だといって、親事業者が下請事業者に対する発注を一方的に取り消したり、下請事業者に対する支払いを拒絶したりするなどのトラブルはよくあります。

独占禁止法と下請法

 こういったトラブルを防止するための法律として、まずは独占禁止法が存在します。
 独占禁止法は、カルテルや談合を取り締まるための法律だと思った方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、そういった役割も持っていますが、それだけではないのです。
 独占禁止法の正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます。独占禁止法は「不公正な取引」の規制も目的としており、その類型として「優越的地位の濫用」も規制の対象となっています。
 下請法は、独禁法の特別法という性格を持っています。下請取引においては、優越的地位の濫用のおそれが大きいため、これを規制する特別法が制定されているのです。

下請法の規制範囲

 下請法の適用があるかどうかは、取引類型と取引当事者双方の資本金によって決まります。
 例えば、各種試験の実施を受注してレポートを出すことを業とする会社が、受注した試験の一部を他の試験所に下請けに出す場合や、他の試験所が受注した試験の一部を下請けする場合は、「役務の提供」という取引類型に該当すると思われます。
 「役務の提供」においては、親事業者の資本金が5000万円以上である場合や、下請事業者の資本金が1000万円以下である場合などに、下請法の適用があります。
 下請法の規制範囲内か否かについては、公正取引委員会のウェブサイトを参照するか、弁護士に相談してみるのが確実です。

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