遺留分
兄弟姉妹以外の法定相続人は、遺産に対して遺留分という権利を有しています。遺留分権利者は、受遺者等に対して、法定相続分の半分を遺留分として請求することができるのです。
例えば、夫が死亡し、法定相続人が妻、長男、長女という場合、長男と長女の法定相続分は各25%、遺留分は各12.5%です。夫が妻に全財産を遺贈するという遺言を残していた場合でも、長男と長女は妻(長男と女にとっての母)に対して、遺産総額の12.5%を遺留分として、それぞれ請求することができます。
法定相続分および遺留分は、前妻の子でも、後妻の子でも同じです。しかし、遺言者は、後妻と後妻の子供に多くの財産を残すことが多いように思います。少なくとも、先妻の子にたくさん財産を残すような遺言は見たことがありません。
遺留分侵害額請求権の制約
遺言が遺留分を侵害している場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求権を行使できます。
注意しなくてはならないのは、遺留分額侵害請求権は、これを行使するという意思表示が必要だということです。行使の意思表示がなければ、遺言がそのまま有効となります。遺留分を侵害する遺言だとしてもです。
もう一つ注意すべきことがあります。遺留分侵害額請求権は、権利者が相続開始を知った時から1年間、相続開始から10年間の間に行使しなければなりません。相続開始を知らない場合でも、相続開始から10年経過すると、遺留分侵害額請求権は消滅してしまうのです。
検認と遺留分額請求権
自筆証書遺言の検認手続きを申し立てると、裁判所から法定相続人に対して検認日が通知されます。これにより、遺留分権利者は、相続開始を知ることになります。
しかし、公正証書遺言は検認が不要です。したがって、遺留分権利者が相続開始を知らないまま、年月が経ってしまうことが考えられます。10年経過してしまえば、遺言の効果が覆されることはなくなります。
以上をまとめますと、遺言者が法定相続人の遺留分を侵害するような遺言を残したいと考える場合、自筆証書遺言よりも、公正証書遺言の方が有利ということになるわけです。