偽装質屋の闇

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質屋営業と利息制限法

質屋とは、物品を質にとって金銭を貸し付け、期限までに返還されないときには、質物を弁済に充てる貸金業者をいいます(質屋営業法1条1項)。起源は鎌倉時代にまでさかのぼるとのことです。
そして、現代社会においては、偽装質屋なるものまで暗躍しています。偽装質屋の暗躍は、質屋には利息制限法が適用されないことと深く関係があります。

利息制限法と過払い金返還請求

利息制限法とは、お金を貸し付ける際の利息の上限を定める法律です。お金に困った債務者の弱みに付け込み、不当な高金利を取るような行為を禁止しています。上限利率は、貸付金10万円未満なら年利20%、100万円未満なら18%、100万円以上なら15%です。
かつて消費者金融各社は、上限利率を上回る金利で貸し付けを行っていました。簡単にいえば、違法な利息を受け取っていたのです。そして、2010年に出資法が改正され、いわゆるグレーゾーンが撤廃されました。利息制限法を上回る利率での貸し付けが正当化される余地はなくなったのです。これを取り戻すのが、いわゆる「過払い金返還請求」です。

利息制限法の抜け道としての質屋営業

前述のとおり、質屋営業には利息制限法が適用されず、年利109.5%まで認められています。利息制限法の利率と比較すると、びっくりするくらいの高金利です。
少し考えると、質屋は質草を担保に取っているので、金利は安くてもいいようにも思えます。例えば住宅ローンの金利は、無担保の融資よりもずっと安い。これは、不動産を担保に取っているので、貸し倒れのリスクが小さいためと考えられます。
しかし、質屋は質草という担保を取るにもかかわらず、高金利が認められています。一番の大きな理由は、質流れという制度にあります。債務者の弁済が滞った場合、債権者が質草の所有権を取得し(質流れ、流質)、債権者はそれ以上の取り立てができません。すなわち、質草をあきらめれば、高金利の取り立てから逃れることができるのです。

偽装質屋の手口

偽装質屋は、質屋営業という形をとり、高利での貸し付けを行っています。質草を取るのは、高利で貸し付ける、そのためだけです。質草は何でもよく、極論をいえば鉛筆一本でも構わないわけです。
ただ、偽装質屋の制度は、債務者が質流れを選択すると崩壊してしまいます。偽装質屋の手には鉛筆一本だけが残り、それ以上の取り立てができなくなるからです。そのため、偽装質屋は質流れの制度について、積極的には説明しません。それどころか「普通、この質草ではこんなに貸せないけど、今回は特別にたくさん貸してあげる」といった恩着せがましいことをいうのです。
覚えておきましょう。やさしい質屋には要注意です。

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