飛び込み事故の家族からの相談
列車に飛び込んだ方の家族から、法律相談を受けることがあります。
親族が列車に飛び込んで亡くなってしまった。鉄道会社から連絡が来たのだが、どう対応すればよいのか。そういった相談です。時々持ち込まれる類型といってよいでしょう。
飛び込み事故(鉄道人身事故)が発生すると、ダイヤに大きな乱れが生じます。「人身事故のため、電車が遅れままして、誠に申し訳ありません。」といったアナウンスを聞いたことがある方は多いはずです。
飛び込み事故による鉄道会社の損害
鉄道会社は、鉄道人身事故によって生じた損害を請求するため、遺族に連絡を取ります。鉄道会社の損害には、車両の修理費用や、運休となった電車により見込まれていた運賃、都会であれば振り替え輸送費用なども含まれます。
もっとも、鉄道会社に生じている損害は、本当はもっと大きな金額となっているはずです。何時間も路線をストップさせるような事故の損害が、数百万円で済むわけがありません。電車の車両はざっと1億円、新幹線なら3億円とも言われています。数百万円では、車両の修理費用も出せない可能性もあります。
後で述べますが、鉄道会社は、現実的に払ってもらえそうな額までディスカウントしたうえで、親族への請求を行っているものと思われます。
飛び込み事故の責任を負うのは誰か?
損害額の問題は、いったんおきましょう。線路に飛び込んだ人が死亡した場合、だれが責任を負うのでしょうか。ここでは、平成28年3月1日に出された最高裁判決を例にとって、説明したいと思います。
この訴訟では、認知症の患者が線路に飛込み、鉄道会社に損害を与えた場合に、患者の妻と子に損害賠償責任があるかが争点とされました。結論的には、妻と子の損害賠償責任を否定しています。
有名な判決ですので、いろいろな場所、サイトで解説がなされています。ここでは、法律に詳しくない方のために解説したいと思います。ポイントは、
① 患者の責任能力
② 患者の生死
③ 患者の財産
です。