列車飛び込み事故(鉄道人身事故)の遺族の方へ②

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飛び込み事故(鉄道人身事故)の責任を負うのは誰か

本ページでは、列車飛び込み事故(鉄道人身事故)について、誰が損害賠償債務を負うのかを説明しています(初めから読む方はこちら)。
ポイントは、
① 患者の責任能力
② 患者の生死
③ 患者の財産
です。

飛び込んだ人に責任能力がある場合

まず、患者自身に責任能力がある場合(上記①)、つまり認知症が重篤ではない場合、患者自身が損害賠償責任を負います。妻や子が責任を負うことは、まずありません。

しかし、患者自身に責任能力があっても、その患者が死亡した場合(上記②)、損害賠償責任が妻や子に相続されます。したがって、妻と子は、相続の結果として、損害賠償責任を負うことになります。

もっとも、患者が財産を持っていない場合(上記③)、後述のとおり、妻と子は相続放棄を検討することになります。

飛び込んだ人に責任能力がない場合

最高裁判例の事例では、患者自身に責任能力がないことが前提です(上記①)。民法上の損害賠償責任は、加害者の故意または過失を要件として発生します。加害者の認知症が重篤で、故意も過失もわからないような場合には、損害賠償責任を負わせることができません。

そこで、鉄道会社は、妻と子に患者を監督しておく責任があったと主張しました。すなわち、妻と子には、患者を十分監督しておかなかったという「過失」があると主張したのです。

この責任は、相続により承継する責任ではなく、妻と子自身の責任です。患者が死亡して、相続が発生したか否かとは無関係です(上記②)。したがって、患者に財産があるかどうかとも無関係ということになります(上記③)。

最高裁は、妻と子の監督責任を否定しました。したがって、妻も子は損害賠償責任を負いませんでした。前述のとおり、飛び込んだ本人も損害賠償責任を負いません。したがって、鉄道会社は、誰にも損害賠償を請求できません。

結果的に、妻と子は相続財産をまるまる受け取ることが可能という結論になります。仮に患者自身が多額の財産を持っていた場合(上記③)、これが妥当な結論なのかというのは意見が分かれるところでしょう。

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