食品営業許可の情報公開をやってみました。

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★飲食店営業には許可が必要

飲食店営業については、都道府県知事の許可を受けなければならないとされています(食品衛生法52条)。飲食店営業は、「公衆衛生に与える影響が著しい営業」であるという位置づけなのです。
その他、以下の業種については、同様の趣旨から営業許可が必要とされています。一つの施設で複数の業務を行う場合には、それぞれについて許可が必要です。飲食店と喫茶店は区別されていますし、アイスクリーム製造と乳製品製造業が区別されるなど、こだわりを感じさせてくれるラインナップです。
食品営業許可業種

★営業許可施設は公開情報

さて、営業許可を取得している施設の情報は、公開情報です。例えば横須賀市は、ウェブサイトでcsvファイルをダウンロードできます。

ダウンロードできる情報からは、法人である申請者の所在地、法人名、申請者役職、申請者氏名、営業所電話、営業場所、業種等が判明します。ただし、申請者が法人ではなく、個人の場合、営業場所、屋号、電話番号、業種しか判明しません。

★横須賀市役所担当者の説明

当職の場合、飲食店営業所の責任者の住所、氏名を突き止めたいと考えていました。そこで、横須賀市役所の担当部署(民生局健康部保健所生活衛生課 担当:食品保健係)に電話をかけて、情報公開請求を行えば、そのあたりの情報を開示してくれるのかと問い合わせました。
担当者によれば、ウェブサイトで公開されている以上の情報は、情報公開請求を行っても開示されない。営業所の責任者の氏名等は個人情報保護法により、開示が禁止されているというものでした。電話口の女性担当者に頼んで、部署の責任者に確認してもらいましたが、回答は同じでした。
しかし、ここで簡単に諦めてはなりません。一般論ですが、営利企業ではない組織の従業員は、イレギュラーな作業に極めて消極的です。その説明が正しいとは限りません。

★横須賀市に対する行政文書公開請求

そもそも、市町村が定める情報公開条例は、保有する公文書の公開を原則としています。個人情報については例外がありますが、「事業を営む個人の当該事業に関する情報」については例外の例外(つまり、原則どおり公開)が定められています。
横須賀市情報公開条例で言えば7条(1)に例外の例外について規定があり、先程の担当者は、これに言及していません。そこで、実際に情報公開請求を行って、例外の例外に言及することにしました。
公文書公開請求書(印刷)

★横須賀市からの回答①

公文書公開請求(2024年4月18日)を行ってから、約2週間後、公文書公開諾否決定期間延長通知書というものが送られてきました。「第三者に意見照会をするため」とされていますが、ここでいう「第三者」は、公開文書に記載されている個人のことです。
公文書公開諾否決定期間延長通知書(印刷)

横須賀市情報公開条例によれば、
1. 第三者に公文書の内容を通知して、第三者に意見書提出の機会を与える
2. 反対の意見書が提出された場合に、文書を公開しようとする場合、その理由を第三者に通知しなければならない
 つまり、「こういう情報を公開することを検討しているけど、それでいい?」と意見を聞くわけです。

★横須賀市からの回答②

上記延長通知から約30日後、公文書部分公開決定通知書が送られてきました。
なお、黒のマスキング部分が非公開とされた部分です。グレーのマスキングは、当職が施したものです。ご覧の通り、申請者の氏名が公開されましたが、住所は非公開とされました。また、施設図面も公開されていますが、マスキングが難しいため当サイトでは割愛します。
公文書部分公開決定通知書

★最後に

最初の担当者の説明とは異なり、代表者の氏名、施設の図面など、ウェブサイトでもともと公開されている以上の情報が公開されました。水際作戦に負けずに粘った甲斐がありました。
一般論では、役所の職員は弁護士に対して非常に冷たい対応であり、行政文書の公開についても、県や市の担当者は木で鼻をくくったような対応のことが多いです。本件も、そのような対応だったと思います。

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